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仙台高等裁判所 昭和28年(ラ)39号 決定 1954年2月09日

抗告人 河井三吉

相手方 河井次郎

主文

原審判を取消す。

本件を盛岡家庭裁判所に差戻す。

理由

本件抗告の理由は別紙のとおりである。

案ずるに、原審は、抗告人がその父である相手方に対し相手方所有の農地の殆ど全部につき立入耕作禁止の仮処分をした事実を認定した上、その農地に対する法律上の権利が抗告人及び相手方のいずれにあるとしても子としてこれまで共に生活してきた父に対し仮処分により農地の立入耕作を禁止するようなことは著しく道義の観念に反し容易に是認し難いと断定しているが、右仮処分が果して如何なる事情でされるに至つたものであるかにつき、その事情を明確にするのでない限り、右仮処分をもつて直に道義の観念に反するものとは速断できないものというべきである。しかるに原審はこの点について何等の説明をもしないばかりでなく、記録に徴するもこの点について審理を尽した形跡を認められないのである。しかして原審は右の事実とその他に認定した原審判記載の事実とにつき全体として観察すると民法第八百九十二条の推定相続人が被相続人に対し重大な侮辱を加えた場合に当ることを認定しているが、上記の点を外にして未だ同法条に該当する事実を認めるに足る証拠がない。これを要するに原審は上記の点につき未だ審理を尽さないものであり、更に原審をして審理させるのを相当とするから、本件抗告は結局その理由ありと認め、家事審判規則第十九条第一項により主文のとおり決定する。

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